高松琴平電気鉄道(ことでん)長尾線の上福岡踏切(高松市上福岡町)で4月、遮断機や警報機が作動しないまま電車が踏切内に進入し、緊急停止する事案があったことがわかった。同社は過去2年半に同じような事案を4件起こしており、四国運輸局は重大事故につながりかねないとして同社に改善を指示した。
運輸局や同社によると、4月11日午後3時50分ごろ、長尾行きの下り電車が踏切に近づいた際、遮断機が下りず、警報機も鳴らなかった。電車の運転士は警笛を鳴らしながら急ブレーキをかけたが間に合わず、踏切内で停止した。踏切内に人や車などはおらず、けが人はなかった。
同社が調べたところ、近くの電柱の上に設置している踏切に電気を送るための変圧器のヒューズが破断していた。同社は全踏切275カ所のヒューズ454個をすべて交換した。
同社は2021年1月~22年4月にも同様の事案を4件起こしていた。事態を重く見た運輸局は、保安監査を実施。その結果、全踏切のヒューズについて、同社は21年度の検査ですべて「良」としていたが、4月の事案を受けて交換する前の時点で、少なくともヒューズ4個に損傷があった。メーカー推奨の耐用年数(10~15年)を大幅に超え、40年近く使用しているものが、上福岡踏切をはじめ約1割あった。ヒューズ自体を検査するよう想定したマニュアルもなかったことも判明した。
運輸局は同社に6月30日付で改善を指示し、今月末までに改善措置を報告するよう求めた。今後改善が進まず、再び違反行為があった場合は、改善命令を出す場合があるとしている。
同社の香川毅・踏切インシデント対策課長は「老朽化した踏切設備については、まず遮断機や制御機器を優先して更新しており、変圧器など周辺機器は後回しになった。コロナ禍もあって、更新が少しずつ後ろ倒しになっていた」と釈明した。
同社は、ヒューズは10年で交換する▽ヒューズの点検マニュアルを作る▽踏切の機器の回路を単純化して故障リスクを減らすため、踏切ごとに変えていた遮断機の下りる時間を一定にする、などの対策を決めたという。
同社の多田賢二・工務部長は「重く受け止め、二度とこうした事案を発生させないよう、職員全体が意識し、徹底して対策に取り組みたい」と話した。(福家司)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル